15代目 クラウン 試乗記
晴れた昼下がり、営業中時間が空いたのでいつもお世話になっているトヨタ販売店にてニュークラウンを試乗してみた。
トヨタのディラーさんには突然の訪問にも快く対応いただき
「あっ、お隣に乗れないのですが好きなだけ乗ってきてください」
と許可をいただいたので早速その感覚はいかに・・・
今回こちらに用意されたのは2リッターターボのRSだ。今回の15代目でクラウンはロイヤル・アスリート・マジェスタが1つのモデルで構成され基本的に動力性能でしか区別されない事になった。
中でも2.0リッターターボは新しいモデルで、前回からダウンサイジングされたものが更に小さくなったモデルと理解して良いだろう。
見た目はやっと普通になったと個人的には思うがクラウンはオーナーの高齢化(65歳以上がユーザーの60%を占めているらしい)から何とか脱却を図りたいとし、苦悩しているらしいが外観はやっと地に足ついたデザインになった気がする。
しかしながら2.0リッターで500万のセダンは果たして新しい世代に受け入れられるのか?
また自分はゼロクラウンから乗り継いでいるが、前回からの4発エンジンはクラウンではないと思ってしまう。更にダウンサイジングと称して2.0ターボを販売したわけだが、それでも燃費や運動性能が同等か納得できる範囲であればOKと考えるが・・
まずは大きな改革はナビゲーションの位置だ。アウディやメルセデスCクラスなどと同じ目の高さの位置に来たナビの配置はクラウンのインテリアには衝撃的と言っても良い。
また、サイドブレーキの解除システムがオートマチックに加えボタンになるなど、かけたまま発進してしまう、というパターンはいよいよ笑い話の時代になるのかもしれない。
インパネはシンプルだがタコメーターとスピードメーターの間に様々な情報が表示されるようになっている。一時期マジェスタに搭載された速度計等がフロントガラスに写し出されるシステムは夜間の走行に便利かもしれない。ただ、ステアリングにある様々なボタンはますます煩雑で使いずらそう、そんなに全ての操作をココに押し込まなくてもよいのではないだろうか。50代にして自分の200系でさえ、時々間違えるほどの操作網なのに(笑)
さて、また今回のコンセプトである「未来をつなぐ」の情報システム。ナビとは今の自分もかなり仲良くしていて、呼び出しの定形句さえ覚えていれば、かなり言うことを聞いてくれているので自分はこのナビを「トヨ子」と名付けて秘書がわりに可愛がっている。
今回の15代目クラウンだがメールやラインが画面に表示されたり、キーワード検索などで認識が調べることのできる内容が増えた訳だが認識されない言語はしっかりと認識できない不足の情報を返してくるので、結果やり取りが面倒になってくる。この辺は人と車のあり方ではあるのだろうがちとコンセプトのベクトルがズレてる気がするのは自分だけだろうか。まずこれ以上の定形句を人間の頭の中に入れておくのも難しいだろう。
また外観の後部にかけての流れるようなスタイルは、ハッチバックに近いアウディのA7に近い形になったが内部ではしっかりセパレートされていてトランクの容量が奥行き、高さ共に格段にアップしている。再び4つのゴルフバッグが収納できるのは従来のおもてなしの精神に近いかな。
また走りの方だが今回は2.0リッターなのでまず力は無くアクセルを踏み込んだ時ややモッサリした感じが少しストレス。まー現在3.5リッターハイブリッドなのでここは目をつぶってコメントは控えたいのだが、少しだけ変化のある部分でコメントすると、アクセルを奥まで踏み込むケースが多くなるわけだが、ペダルのその奥にあるボタンを押すようなカチャッと感が不思議、そこにタッチするとエンジンが盛り上がりターボらしさが出てくるといった不思議な感覚を感じたが、ここに関しては基本クラウンとは言いがたい。と言うのが本音。
しかも2.0リッターは中クラスにあるようなアイドリングストップがついているため夏のエアコン作動時にはついたりストップしたりが激しくてなんかガッカリする。クラウンならアイドリングストップはいっそのこと要らないだろう。まー機能解除もできるのだろうがこれが若年層を引き込む秘策とするならば、500万弱するこちらはなんか違う気がする。
またヨーロッパで鍛えられたという足回りだが今回は試乗なのでアクティブな運転は避けたが一言で言えば余り変わりはない。元々クラウンはレクサスと共に地面に張り付くようなコンピューター制御が充実していて、サーキットに出てもスポーツカーに負けないバランスが研究され尽くしている。これは一部のYouTubeを見てもクラウンの早さは明らかに証明されている。
2.0リッターについては恐らくはクラウン全シリーズ同じシャーシが組み込まれているため、このクラスは車重が無いぶん路面からの突き上げ感が気になる。独りで乗るぶんにはちょっと品に欠けるかな。これでどっしりとした車重に太めのコンフォートタイヤからの感覚なら納得なのだが長時間のドライビングには差が出てくるだろう。
室内のインテリアに関しては基本的に今回はモケットと人工表皮のコンビに乗ったがゼロクラウンでは酷かったコーナー時におけるプラスチックとその他硬い素材の擦れ音やきしみ音がまず無くなったと言える。そこは14代目から改善されたのではないたろうか。
室内空間はやはりクラウンらしいと言える。
また更に車幅1800と変わらずだが、あくまでも日本の道路事情に合わせたとゆうコンセプトのこの車は今回一回り小さい車に乗っているかのようなよう、また車幅感覚が捉えやすくココはゼロクラウンのような良さに戻ったと言える。余談ではあるが因みに200系クラウンは何故か毎回何十万キロを乗っているクラウンユーザーの自分でさえ捕まえ難く、ホイールのガリッ!!やら駐車場の格納の際にイメージ通り入れる事が出来ず曲がる。
の現象に少し困っている。しかし今回の15代目は何処に入れてもサクッとイメージ通りなのだから何とも不思議だ。
今回の試乗、総評として個人的にはやっと素敵なエクステリアには仕上がったわけだが14代目クラウンと同じくインテリアはちゃちい。大口径のナビと情報パネルは圧巻ではあるが自分は実用性としてはムダが多い。個人的にはこれならメルセデス220ディーゼルの方が実用車という観点からポイント計算していくと軍配があがる。
乗り継いできたクラウンユーザーとしての履歴はゼロクラウン33万キロ、200系3.5リッターハイブリッドは20万キロ(現時点)を越えてきた。そろそろ乗り換えの検討時期に来ているわけだが時期営業車はクラウンから離れてしまうかもしれない。
既にトヨタさん、そもそも論で言わせていただくとこのセダン離れを取り返そうとクラウンBEYONDで再発信したみたいだが、40代でも50代でもクラウンを選択しようとするユーザーの心が理解出来てないような気がする。14代あたりから企画そのものが前にもコメントで書いた「会議を重ねるごとに正義を振りかざすもっともな多数派意見に振り回されすぎてオーディエンスにより出来上がったもの」といった印象が強く、クラウンにおける日本人の変えてはならないもの、またクラウンと言うものが背負ってきたアイデンティティーを感じないのは自分だけだろうか。
クラウンのユーザーとはベンツでもなく、BMでもないのには理由がある。我々を育ててくれた段階世代の親達が「いつかはクラウン」と憧れ敵わなかったその親を越えるためそれを求めるのだ。また営業をやっていれば信用や品格の漂うクラウンはまず嫌みがない。クラウン=信用のおける人 と言う暗黙の評価がそこには存在する。おもてなしに於いてもヨーロッパ車を越える多機能さには流石日本車と言える部分がそこかしこにに見られたからこそクラウンなのだ。
そのフィロソフィーを今の40代、50代で持っているものだけに次期クラウンは魅了させなければならないはずなのに、もしかしたら真のターゲットを外し、そこに響かない物を作ってしまったのでは無いだろうか。
若き高級セダンユーザーは性能ではない、もはやフィロソフィーの荒廃しきった日本の車作りに呆れ、セダンユーザーは益々欧州車にやむ無く乗り継ぐと思う。今回のクラウンBEYONDは今までのユーザーを置き去りにし、新たな方向性へのBEYONDなのか・・