たっくんの勝手な考察

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思い出の茄子味噌定食

人には誰しも思いでの味があるのではないだろうか。

例えばそれがおふくろの味だったり、初めてのデートでパートナーと食べた味だったり、大切な仲間と特別な場所で食べた味だったりとそれは人それぞれであろう。

 今日はそんな忘れられない味を思い起こさせる味の体験をしたので備忘録に書き留めたい

 

 きっかけは学生時代にさかのぼる。板橋区に一人暮らしをしていた頃、アパートから近いとある中華料理店に日々「なす味噌」を目当てに通ったその味だ。

残念ながらそのお店はほどなくして閉店してしまったが、それまでは多い日には昼と晩の二回も利用したものだった。

社会人になってからも懐かしさと、もしかしたら再開しているのではないかとほのかな期待を込めて何度かその場に確認にも行ったものだ。

 

その頃の自分と言ったらまだシャイな田舎者で毎日のように顔を合わす店主にさえ声もかけられないでいたが、ある日いつもの茄子味噌を注文すると厨房から強面の店主に声をかけてもらったことがあった。
「うちの茄子味噌うまいだろ、毎日自家製味噌をこうして作ってるんだ!見てな!!」
とミキサーを片手にその日一番に入店した自分に惜しげもなく味噌の作り方を見せてくれた。その過程で店主から余計な言葉は無かったが、自分はその作業を食い入るように只々うなずきながら見つめていた。
白味噌赤味噌、砂糖や唐辛子、そしてカーシューナッツ等が入ったのは今でも衝撃的な記憶にある。それらを一気にミキシングしたわけだが残念ながらそれがあまりにもとっさの出来事だったので、すべてを記憶することは出来なかったのと、学生の自分には食材の認識出来なかったのだが明らかにその時に、隠し味と言うものが本当に予想も出来ないものを指すのだと感心したものだった。

店主はそれをいつものようにカンの中に流し込み、その日の味噌を準備した。

そのあとはすかさず調理が始まり茄子やバラ肉、人参の短冊切りが中華鍋の中で踊るように炒められ流れのなかで秘伝味噌の混入、目にも留まらぬ速さで最後にトマトパスタのように、油がかくはんしてオレンジの油に分離する部分と具材に絡む部分がハッキリ分かれるのがこのお店の茄子味噌の特徴だった。そしてコレが実にうまい。

 

そんな思い出の味をその後30年近くも探すことになろうとは思いもよらぬ自分がいた。中華料理店に入っては茄子味噌を探し、あればそれを注文した。だがその味には遠く及ばなかったのだ。

ところが最近になり住んでいる隣の町の中華料理店に先日初入店した時のことだ、いつものルーチングで茄子味噌を注文すれば、バラ肉をまとったそれに近い味に出逢うことができたのだ。個人的には少し油分が足りなかったり、料理に飛び込む紫蘇やパプリカは余計だったが思い出に浸るには充分なものだった。

 人の出会いも心に忘れられない思い出とその後の人間形成に影響さえ与える出会いもあるが、味の思い出もこんなにその後の自分の味覚、こと中華料理においてクサビを撃ち込まれようとは思いもしなかった。


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